漢方について
「漢方薬」の歴史
漢方薬は約2000年の間、発達を続けてきました。その間、それこそ無数の処方が作られましたが、優れた物だけが残りました。いわば約2000年間にわたって臨床実験が繰り返されたようなものです。現代の新薬で、患者さんにおこなう「臨床治験」が3~5年程度であることを考えると、いかに徹底・選りすぐられた物であるかがわかります。
ほとんどの皆さんは、漢方は中国の物と考えがちです。しかし、生まれは中国ですが、日本に伝えられ、日本人に合うように改良されたものが「漢方」なのです。
「漢方」の考え方
皆さんは「陰陽」という言葉を聴いた事が有りますか?
古代中国では、万物は相反する二つの要素、「陰」と「陽」で成り立っている、と考えられていました。たとえば、「天と地」「昼と夜」「白と黒」など。
このバランスが崩れると、天候不順などの災いがもたらされると信じられていたのです。
なんと人体にも陰と陽があります。それは…
陰 体内・腹・下体部・五臓(肝・心・脾・肺・腎)、血、水
※このほか生理機能の減退を含みます
陽 体表・背中・上体部・六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)、気
※このほか生理機能の亢進を含みます
上記で用いられる器官や内臓の名称・機能は、西洋医学で使われるものとは必ずしも一致していません。
とくに耳慣れないものについて簡単にご紹介します。
肝…情緒系中枢、自律神経系、運動神経系、肝臓の部分的機能をつかさどる
脾…消化器系、水分代謝の一部、栄養代謝、抹消循環をつかさどる
胆…排泄・消化の促進、胆汁の貯蔵と排泄をつかさどる
三焦…水分代謝全般を指す機能系
体のバランスが崩れる(陰陽のバランスが崩れる)と、さまざまな不調があらわれるかもしれません。
その為、二つの要素がつねに調和を保つように心がけることが大切です。
この調和の保たれた状態を「中庸」といいます。
漢方では、からだを作る三要素は「気・血・水」の三つの要素によって成り立っていると考えられています。
三つのバランスが保たれていれば、正気(せいき)が生まれ、健康を保つことができます。
しかし、外からの病原菌や、ストレス、不摂生、心労などでバランスが乱れると、病気や心身の不調が生じやすくなります。いったい「気・血・水」とは、それぞれ何を指すのでしょう?
三つのうち、もっとも重要な要素。あらゆる活動の神経機能を指します。
生命活動のエネルギーといってもよいでしょう。気が減少すると、消化吸収能力が低下し、栄養が全身に行き渡らなくなるといわれています。また、精神活動も不活発になるといわれています。こうした状態を「気虚」といい、「だるい」「疲れやすい」「食欲がない」「風邪をひきやすい」といった症状が起こるといわれています。
血液をはじめとするあらゆる体液の総称。循環器系や内分泌系機能など、体内のさまざまな調節をおこないます。
栄養 素を循環させ、血液中の老廃物を取り除くため、滞りなく働いているときは、活動力もアップ。しかし、いったん停滞すると、頭痛、肩こり、冷え、のぼせをはじめ、さまざまな症状が起こってきます。これを「オ血(おけつ)」といい、とくに女性でよく見られます。
生体を防御する機能。西洋医学でいえば、白血球の一種のリンパ液にあたります。
血管とともに全身をめぐり、抗体をつくって病原微生物を破壊するリンパ液は、免疫系をつかさどっていますが、ちょうど同じような働きをするのが水です。水がたまった状態を「水毒」といい、浮腫(むくみ)や手足の冷え・しびれ、息切れ、咳、アレルギー反応などが起こりやすくなるといわれています。